(2) 布石と大場・急場
布 石
◎ 「碁は全局で打つ」特に布石は。この心がけを忘れないことです。(石田芳夫)
◎ 機に臨み変に応じて自在に飛躍する布石感覚の養成こそ第一。
◎ 布石は、好点を相手にひとつ打たせて自分もひとつ取るという、バランス感覚が大切です。(大竹英雄)
◎ 布石はつまり、どこが一番大きいかということ。大きいということは、広いということ。 「布石は広いところから打つ」というのが原則です。(石田芳夫)
◎ 布石の基本的な方法を一つだけ。まず、どのあたり(方向)が最も大事な場所かを見きわめること。そして、次にどの着点がいいかを決めます。盤が狭く感じられれば、碁が強くなるのです。(石田芳夫)
◎ 布石の考え方としては、正しい方向をつかむことが大切です。それには局面の骨格をしっかり見極めることです。(前田陳爾)
◎ 布石や序盤は打つところが広範囲なのでむづかしいと思われます。先ずは石数の少ない方面に着眼するのがコツであり大体において正しいものです。先ずは広い方面に眼を向けることです。(坂田栄男)
◎ みすみす危険を冒すのでは、本物とはいえない。相手にも与え、自分も取って、調和を保って打つ。そして相手がバランスをくずせば、そのスキをついて押し切ってしまう。これが本来の行き方、勝ち方だと思います。(坂田栄男)
◎ 一方で地を稼せいだら、他方では手厚くというふうにバランスを保つ心がけが大切。(坂田栄男)
◎ どの布石でもそうであるように、初手から十数手くらいまではパターン化できるとしても、それ以降はまったく未知の分野。打ち手の独創に頼る以外はありません。(大竹英雄)
◎ 弱い石を作らないのが布石の鉄則。
◎ 戦いは自分の石の多い場所で始めなさい、と教えられます。相手にヤキモチを焼かせ(て、入らせ)るのが布石のコツと言っていいでしょう。(小林覚)
◎ 布石でリードされてしまうと、後が大変打ちにくくなる。(石田芳夫)
◎ 相手の足早な打ちまわしに対しては、スピード負けしないことが肝心。(福井進)
◎ 趣向で変則的な布石をするなら、おとなしい碁にしてはいけない。(三村智保)
◎ 着手は常に部分で打たれるが、眼は大局的でなければならない。
◎ 漠然とした局面でこそ、感覚の良し悪しが問われる。
◎ 天王山や必争点の場面でソッポを打っていたのでは、大きな後退を招く。
◎ 石の形には後の動きの指向というものがあり、それを見きわめて作戦を立てることが大切。(石田章)
◎ 序盤は、相手に応じて柔軟に、盤面が向かう方向を読みとることが大切です。(大竹英雄)
◎ 三つの大場があれば、その中で一番軽いところから打つ。そう打つ意味は相手の応手によって後の打ち方がかわってくるからです。(趙治勲)
◎ アキ隅だからどこでも同じ、こんな風に考えていてはプロとしてやっていけない。様子をきいて、大所の価値に大小をつける。(梶原武雄)
◎ 序盤、中盤においては石は中央へ中央へと向わなければならない。(梶原武雄)
◎ 碁では、実質だけではなく、可能性の問題が重視される。(工藤紀夫)
◎ 碁は二人が1手ずつ交互に打つものだから、彼我の勢力差が極端に現れるものではない。(石田芳夫)
◎ コミ碁の白はことさら局面を複雑化する必要はない。(大竹英雄)
◎ コミなしの黒番は、どこかで頑張らないと碁になりません。(福井進)
◎ 白に主導権を与える展開は、コミなしの黒番としては本意ではない。(福井進)
◎ 序・中盤時代では、一般的に下からくる手は恐ろしくないと考えるのが常識。(前田陳爾)
◎ 序盤早々から第二線に打つのは、武宮正樹でなくても顔をしかめそう。
◎ 序盤のうち、石が下のほうへ向かって、外部へ出ていないというのは、大変不利なのです。(曲励起)
◎ 先に損をするうち方は、アマリ形になるおそれあり。
◎ 実戦となるとなかなか型通りにいきません。部分にこだわらず全局的な判断が大切です。(長谷川章)
◎ シマリを打つと、布石全体の足が遅く感じられ、黒の足早やが目立ちますが、そこはあわてないこと。シマリによって得た隅の有利性は、必ず後になってモノを言ってくるはずです。無理をしなければ何手か進むうちにゆとりが感じられてくるものです。それと小目の布陣でシマらずにカカらせて打つ、この場合は碁が広くなります。(石田芳夫)
◎ 一間(高)・二間(高)バサミは戦って行く碁、三間バサミは全局の布石に比重。
定石とは
◎ 定石は生きもの、とよくいわれます。これには二通りの意味があります。一つは局面によって定石を打ち変えなければならないことと、もう一つは今日の定石は必ずしも明日の定石ではない、ということです。定石、それは必ずしも絶対的なものではありません。碁に対する基本的な考え形が変われば、定石に対する評価も変わるのです。(相場一宏)
◎ 定石は普通「隅で双方が最善を尽くし互角にワカれる型」というような定義をされていますが、しかしそこでは、どういう隅なのか、最善とはどういうことなのか、までには言及しておりません。その二点が、いわば「生きもの」の部分であり、前者は定石の方法、後者は定石の目的につながる問題となるのです。(相場一宏)
定石の目的
◎ 碁は、お互いが勝利を目的にして最善を尽くそうとします。しかし、碁に必勝法はなく、まして開始直後は盤面が広すぎて、どこからどう打ってゆけばよいのか見当もつきません。そうしたとき、一応の道しるべとなるのが布石の理論であり、定石の型なのです。(相場一宏)
◎ 定石を知る意味合いは、知識を思考の代用にすることにあます。白紙から考えるには、余りにも変化が多いから、ヨミという点的思考に頼るより、大勢の人が検討してきている線的思考に基礎を置くほうが効率的なのです。(相場一宏)
定石運用
◎ 現在でも、必勝法は闇の彼方であり、進歩したはずの布石も定石も、正しい路線を走っているという確証はありません。ですから、定石にしても権威を持った型としてではなく、布石において有利とされる隅の争奪戦でお互いが最善を尽くした一つの結果、と認識することが常識にまでなりました。(相場一宏)
◎ 定石は、布石の一部だから布石の視野の中で使いこなすことが大切。(片岡聡)
◎ 定石を打つときは、あらかじめ先行きを見届けることが大切。(片岡聡)
◎ どの定石も先着しているほうが幾分有利に分かれます。その有利な分を勘定に入れて互角と見なすのです。(趙冶勲)
◎ 定石を棋風や好みで判断するのは悪いことではない。(趙治勲)
◎ 考えればいろんな手があるものである。柔軟な発想が定石運用のコツだ。(梶原武雄)
◎ 形や定石になずむことが碁では一番いけない。場合場合にうまく適応するのがよい。(梶原武雄)
◎ 忘れたときは、思い出す努力をしないこと。碁は記憶で打つものではありません。その場は自分のカで最善を尽くせばいい。(前田陳爾)
◎ 定石にはシチョウ関係を前提として成立する型があります。一般的にこれを条件などと軽い気持ちで考えがちですが、条件ではなく、前提なのです。(前田陳爾)
◎ 知らぬ定石を知らぬまま頑張っては、ひどい目にあってしまいます。知らぬということの裏は、ハマるという危険と言えるから、あらゆる定石はハメ手の要素を含むとも言えます。(相場一宏)
急 場
◎ 普通は疎の方に着点を求めるものだが、ときには大場より急場。
◎ 碁は大場より急場、シマリより急場。
◎ 「大場さえ打っていれば間違いがない」とはよく聞く言葉ですが、大場には、あまり生活の匂いはありません。しかし、急場となると、生活権がかかってくるので、コトは重大です。慎重に局面を分析して着手しなければなりません。(前田陳爾)
◎ 大局によりシマリの価値は変動する。
◎ 急場があったら順序を変える。
◎ 相手の石を攻めている手は、大概の大場より実質的に大きく“大場より急場”といわれるゆえんである。
◎ “大場より急場”をおろそかにすると、たちまち勝負がつく。
◎ 急場よりも大場のほうが目につきやすいものですが、急場を逃がすと禍いが後々まで及ぶことを肝に銘じなければなりません。(石田章)
◎ 攻防の急所、つまり急場こそ真の大場なり。
◎ 迷ったときの大場。
◎ 大所発見の方法論、ものの考え方、石感といったものは、数学の公式みたいにこれだと指し示せる筋のものではない。一歩一歩地道に体得していくしかない。(梶原武雄)
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