(21) 置 碁
置碁とは
◎ 置碁は白が第一着手を盤面に下し、黒が第二着手を打った、その時点が黒の最も優勢な局面です。その後、石数が増えるにつれ、白石と黒石の効率の差によって白が少しずつ追い込み始め、最終的に白が追い着き追い越すか、黒が逃げ切るかによって勝敗が決まります。(石田芳夫)
置碁・黒の心得
◎ どうしたら置碁(黒の立場)に強くなれるか、その心構えだけでも述べておきます。(大竹英雄)
(1) 置碁では序盤から中盤までは、ほとんどの場合黒が優勢です。そのためにどうしても消極的になりがちです。度が過ぎて手堅く打つとか、不要不急の手を打つとか、どう見ても優勢ですから、少しくらい悪い手を打ってもたいしたことはないだろうといった考えが出てしまいます。置石は元々技術的に差があるからこそ置くのであって、また多少優勢と思えても、自分の技術を最大限に発揮してこそ対等なのだ、ということを忘れてはなりません。
(2) 下手意識があまりに強いと、どうしても臆病になります。その悪いクセの一つが上手について回るという共通した欠点になって現れます。やはり、手を抜くべきときは手抜きして他の好点に先着しなければなりません。それには、どういうときに手抜きできるか、という状祝判断を持てるようになることが大切です。
(3) 置石の考え方が重要です。はじめに規則で置かされたと考えるから置き石の配置ぐあいに不満を持つのです。隅の星にしても、また辺や中央の星にしても大局的には極めて重要な要所にあたるのです。4子でも7子でも、要するに自分の意志で置いて布石したと考えれば、これほど強い援軍はいないはずです。これは置石を十分に働かせる大きな秘訣です。
(4) 置いた石の働かせ方を日頃から勉強することです。
(5) 最後に最も大切な心構え。
それは、布石が次第に進むと、黒模様もできますが、それ以上に白模様が気になります。ただ気になるうちは別にどうということはありませんが、そのうちに白の構えのほうが大きく見えてくるのです。そこですぐ白地に入って消そうとするわけです。それは白の望むところであって、元々カのない黒が白の勢力圏で戦いをすることはどだい無理というものです。錯覚して白の優位を感ずるようではもはや気力においてのまれてしまった証拠です。このへんにも下手の浮かび上がれない大きな原因があるのです
以上の事柄は置碁の心得として常に念頭に置いて下さい。
◎ 「守り一辺倒はよくない」というのは、碁の大原則ですが、こと置碁に関してはマギレなく地さえ確保してしまえばいいケースもあります。白に外勢を与えることを覚悟して。(石田芳夫)
多子局では
◎ プロから見ると、四子局の布石はきわめて狭いもので、方向さえ間違えなければ、深い読みなど必要ありません。(石田芳夫)
<四子局教訓>
( 1) 互先の感覚で戦っては、白の術中に陥る。
( 2) 早いうちに、置石の威力を十分に発揮させること。
( 3) 黒石が圧倒的に厚いところでは好戦的になること。
( 4) 堅い白地はいくら固めてもかまわない。
( 5) 攻撃対象があれば自陣は安心。
( 6) 早い時期に三々に入らせると黒の打ちやすい形勢になる。
( 7) 定石は簡明なほどよろしい。
( 8) 厚みは小さく囲うな。
( 9) 白の弱い石を攻めている間は、自陣への打ち込みはこわくない。
(10) 石が各所に分散した碁では、弱い石を作らないこと。
(11) 隣り合った隅では、大きいほうに地を囲い、小さいほうは攻めに役立てる。
(12) 白の強いところでは、キチッと生きる。
◎ <六子局以上の多子局では>
( 1) 多子局の黒は、紛れを避けて白を大きくにらむカラミ戦法が有力。
( 2) 多子局の黒としては、なるべく早くカラミ大勢を狙うのが勝勢への近道。
( 3) 置石を活用する大型カラミに発展させるのが、多子局では有効適切。
( 4) 置石の勢力を利用して大きくカラんでゆくことが、置碁必勝の第一条件。
( 5) 多子局の布石は、黒が特に悪手を打たない限り置石の威力による優勢は容易にはくずれないもの。
( 6) 多子局の黒は地を考える必要なし。
( 7) 多子局の白は、常に危ない橋を渡り続ける宿命にある。
( 8) 置碁での白は、序盤はまともに戦わず。
( 9) 白のやむを得ない打ちすぎをとがめる心構えが、置碁における一つのポイント。
◎ <八・九子局では>
( 1) 大体九子や八子の置き碁は勝つために打つのではありません。上達するために打つのです。つぶれることが上達への早道と言ってもよいでしょう。戦いのコツを飲み込んで上達することがまず第一の目標、それには
( 2) 形をどんどん決めてしまうこと。
( 3) 難しい戦いもあえて辞さないこと。
( 4) トドメを必ず刺すこと。
などをあげておきます。(山部俊郎)
置碁・白の立場では
◎ 置碁的な大局観は互先の大局観と多少異なり、これを養うことは、手筋の勉強と並んで下手打ちには欠かせません。(藤沢秀行)
<二子局>互先とそう変わりありません。無理は禁物。部分的なヨミは互角と見てよく、大局観で勝負するような碁に持ち込む。
<三子局>一隅に互先の定石が現われます。その定石と他の隅との釣合い・バランスを考えてじっくり布石し、下手に隙が生じるのを待ちます。
<四子局>地に甘い弱点を衝いて細碁に持ち込むか、辺に模様を築いて攻めを一局の中心に置くか、作戦に自由を。
◎ 置かせた碁を、序盤で大失敗して形勢不利となった互先の碁と考えたらどうでしょうか。その場合は勝負手を連発して大逆転をねらうか、じりじりと差を詰めて微差の逆転をねらうか、いずれにしても緩んだ手は打てませんし、小利にこだわって局面を狭くすることも禁物です。置かせた碁では、相手が間違える可能性が高いとしても、自身にも起こりえるから、「緩みなく手広く」という姿勢が上手の碁の質というものです。(藤沢秀行)
◎ 置碁の白の打ち方をいくつか。形をキメない、守り三分、フリカワリ自在、コウで撹乱、リズムで崩す、勝負を急がない、などです。(藤沢秀行)
◎ 置碁の上手に特有の「マギレを求める手」があります。これはハメ手と違って、相手に正しく受けられても悪くなることのない手法です。ピンと筋に張ったいっぱいに働く手です。
<二・三子局>では、下手の間違いをまったく期待せず、相手の狙いを挫いたり局面拡大に主力をおき、マギレの手は互先でも通用するものを。
<四・五子局>では、下手の間違いを期待してはいるが、間違えてくれなくとも不利にならぬ手、意表を衝いて動揺を誘う手を。
<六子局以上>では、下手の間違いを期待する。的確な反撃を受ければ不利になるが、その一歩手前で変化可能な手を。(藤沢秀行)
◎ 白の立場から言えば、簡明なうち方では置碁のハンディは一向に縮まらないという家庭の事情がある。上手は本手だけを打っていたのでは、いつまでたっても追い着けないので、常にいっぱいの手、時には打ち過ぎ気味の手を打たなければなりません。苦しかろうが、無理だろうが、とにかく、少しでも複雑な戦いに持ち込んで下手を混乱させたい。(石田芳夫)
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