(13)アタリ、ノゾキ、出、ダメ、味
碁には「必要のない手は打たない」という鉄則があります。山があるから登るのではなくて、必要だから打つ。ハネでもノビでもノゾキでも、それを打たねばならぬ理由があるから打つ。そういう必然の着手を追求し続けて終局するのが、碁というものの理想であります。特にキリとアテとは、うかつに打たない心がけが大切で、必要のないアテや切りは、打てば必ず悪い結果になるものです。(坂田栄男)
アタリと抜き
◎ アタリは、相手が絶対いうことを聞いてくれるので、一種の安心感からつい打ってしまいますが、お手伝いの悪手になることが多いのです。(石田芳夫)
◎ アタリがあるとすぐ打ってしまう。これが弱い人の悪いクセです。王手というのは権利と考えられますから、最も有効なときに行使するのが正しく、いたずらに乱用すれば、権利の浪費となります。(工藤紀夫)
◎ たいていのアタリは相手がほぼツイでくれますから、打ってはいけないアタリに対して敏感になるのも大事です。(上村陽生)
◎ 初歩のうちは、取れる石は取る、アタリはアテる、と碁が直感的、本能的ですが、そこを突破しないと上達は望めません。取る・取らない、アテる・アテないは手段であり、目的を見きわめるべきなのです。
◎ アタリは、ツグものと決めつけるからダメなのです。碁形に応じて変化するものだと、幅のある考え方でなければなりません。(工藤紀夫)
◎ 一般に、抜けるところは抜いてしまうのが後クサレがなくていい、としたもの。(前田陳爾)
ノゾキ
◎ ありようをいうならノゾキというものに対して、ツぐよりもツがない方を先に考えるのが常識というものなのである。ノゾキをすっぽかすか、それとも他の手段でツギを間に合わせるか、またはノゾキを逆襲するか。なさそうに見えて存外多いのがすっぽかすケースだが、ノゾキに反対するケースとしては、側面工作でノゾキに答えるというのが一番多いだろう。何だかだといいながらもノゾキはツがなければならないものと昔から相場が決まっているし、ツながなければならないのに素直にツぐのが癪だからひとひねりのケースが多くなるということなのである。(前田陳爾)
出
◎ 先手だから打ってよかろうという程度の意識で出を打ってはいけない。出を打つ前に他に狙いがないかを考えよ。(上村陽生)
ダメ
◎ 碁で最もこわいものの一つにダメヅマリがあります。ダメのツメ方の上手下手でその人の技倆が分かるものです。(曲励起)
◎ ダメが詰まると死石が化ける。いや、化けるところか、生き返ることさえあります。ダメを一つ、ツメるかツメないかで、結果が逆になるのが碁ですから、ダメへの神経は敏感でなければなりません。(工藤紀夫)
◎ 専門棋士はよく「ダメの美しさ」ということをいいます。これは必要のない手は打たぬという態度、考え方と軌を一つにするもので、打つ必要のないダメは最後まで打たずにおくのが、たしなみとされているのです。この態度を身につけることは上達のための手がかりとなります。(坂田栄男)
◎ 強い人の碁ほどダメが沢山できます。能率的な石、働きのある手が多ければ多いほど自然にダメが多くできるのです。弱いうちは、どうしても効果の薄い手ばかり打つので碁を打ちながら、ついでにダメもみんな打ってしまうのです。(坂田栄男)
◎ ダメヅマリが問題となるのは、そこに断点が絡んでいるからです。逆に言えば、相手のダメヅマリを咎めるには断点をどう利用するかにかかっていると言えるでしょう。死活だけでなく、ヨセでも大いに利用されます。(小林覚)
◎ なにもしなければ攻め合い勝ちなのを、ダメをツメたばかりに攻め合い負けにしてしまったり、手数がノビると思って打ったのが大変なダメヅマリを生じたということはよくあることです。(大窪一玄)
味
◎ 味とは一体どういうのを言うのか。例えば一例をあげると、ある形ができあがってきたとします。そこでAと打つかあるいはBと打つかの問題が生ずることがあります。その場合、そこでの形を決めることをいったん中止し、全局的な観点から将来AあるいはBと打つようにする――その余地を残すのを「味」というわけです。(曲励起)
◎ 弱点をとがめる可能性で、かなり高級な考え方である。直接には手にならないが、周囲の条件の進行状況によって手段が生じるというような状祝にあることを言う。
◎ 味わるは、いつかは必ず禍根を暴露する危険性をはらむものです。(前田陳爾)
◎ 碁の場合、大体においてゴリゴリやっていくのは失敗に終わるものです。相手の味を残すようにして打つほうが手になることが多いのです。(曲励起)
◎ 味の悪いところを手入れせず、相手に打たれてひどい目に合うことは意外に多く経験しているはずです。また逆に相手のキズに気づかず逆転のチャンスを逃すことも少なくないでしょう。(曲励起)
◎ 世の中得てして”味”だけで終わってしまう事も間々あります。(吉田美香)
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